1891年刊行(ケープ地方の家庭料理)
1891年ケープのボボティー
1891年にロンドンで刊行されたヒルダゴンダ・J・ダキットによるケープ地方の家庭料理書に記録された肉料理「ボボティー」。カレー粉と炒め玉ネギ、牛乳に浸したパンを合わせた牛ひき肉に、卵と牛乳の液を注ぎ、オーブンで黄金色に焼き上げる、甘味とスパイスが調和した素朴な家庭向け再現レシピ案です(未試作)。

MODERN RECREATION
現代向け再現案
材料
作り方
- 【パンの浸漬】ボウルにちぎった白パン(30g)を入れ、牛乳60mLを注いでしっかり吸水させ、手で軽く水気を絞ります(絞った牛乳は上掛け用に回しても構いません)。
- 【玉ネギのソテー】フライパンにバター約8gを中火で熱し、みじん切りの玉ネギをしんなりして薄く透き通るまで炒めます。火を弱め、カレー粉、砂糖、塩、レモン果汁を加えて香りが立つまで手早く混ぜ合わせ、火から下ろして粗熱を取ります。
- 【肉ダネの調製】生肉・生卵を扱う前に手指と器具を清潔に洗います。清潔なボウルに牛ひき肉、水気を絞ったパン、炒めた玉ネギとスパイス、刻みアーモンド、溶き卵1個分を加えます。全体が均等にまとまるまで手早くしっかりと混ぜ合わせます。※食中毒防止のため、生のひき肉や生の卵液が混ざった肉ダネを決して味見しないでください。
- 【耐熱皿への敷き詰め】容量約1Lの浅い耐熱皿の内側に残りのバター約2gを薄く塗り、肉ダネを平らに敷き詰め、スプーンの背で表面を平らに整えます。
- 【上掛け卵液の注ぎ入れ】残りの卵1個をボウルに割り入れ、牛乳90mLを加えて泡立て器でよく混ぜ合わせます。敷き詰めた肉ダネの上に静かに回し注ぎ、中央にローリエを1枚刺します。
- 【オーブン焼成と安全確認】180℃に予熱したオーブンに入れ、約25〜35分焼成します。表面の卵乳液がふっくらと固まり香ばしい焼き色がつき、最も厚みのある中心部の温度が食品用温度計で75℃以上・1分間以上に達したことを確認して取り出します。設定時間や見た目だけで判断せず、中心温度が不足している場合は追加加熱して再測定してください。加熱直後の耐熱皿や蒸気によるやけどに十分注意してください。
- 【供食・残食保存・安全注意】耐熱皿のまま食卓に運び、温かいご飯(白米)とともに取り分けて供します。表面に刺したローリエは硬く誤嚥・窒息の危険があるため、提供前または取り分け時に必ず取り除いて破棄してください。※使用アレルゲン:小麦・卵・乳成分・アーモンド・牛肉(市販カレー粉等の原材料・アレルゲン表示もご確認ください)。残食は室温に放置せず清潔な浅い容器に小分けにして、2時間以内(周囲32℃超では1時間以内)を目安に4℃以下の冷蔵庫で密閉保管し、2日以内に中心75℃以上へ十分に再加熱して消費してください。
HISTORICAL RECORD
歴史的な根拠・参考史料
参考史料は料理の歴史的背景を示すものです。現代レシピの分量や加熱時間を保証するものではありません。
史料に基づく記述
1891年にロンドンで刊行されたヒルダゴンダ・J・ダキット著『Hilda's "Where Is It?" of Recipes』印刷ページ12〜13ページに、「BOBOTEE. (A delicate Indian minced curry. Malay or Indian. My mother's Recipe.)」として詳細な材料と手順が記録されている。
原典の材料には、肉2ポンド、玉ネギ2個、大きな厚切り白パン1枚、牛乳1カップ、卵2個、カレー粉大さじ2、砂糖デザートスプーン1杯、レモン1個分の果汁または酢大さじ2、アーモンド6〜8粒、バターひとかたまりが指定されている。
調理手順として、パンを牛乳に浸して絞り、バターで炒めた玉ネギにカレー粉・砂糖・塩・酢を合わせ、肉・パン・卵1個と混ぜてバターを塗ったパイ皿または小カップに入れ、もう1個の卵と牛乳を泡立てて上から注ぎ、レモンまたはローリエの葉を刺してオーブンで焼き、ご飯を添えることが指定されている。
原典の注記には「冷やした羊肉(cold mutton)で作っても同様に良い」こと、また「熱湯半パイントに浸して濾したタマリンド1オンスの果汁を酢の代わりに用いると非常に心地よい酸味が得られる」ことが付記されている。
推定・解釈
- ボボティーという名称や料理の起源については、オランダ東インド会社支配下のケープ社会における東南アジア・インド洋圏由来のスパイス文化とヨーロッパ系家庭料理の融合として語られることが多いが、1891年原典の具体的な配合が17世紀から同一のまま継承されていたことを示す直接証拠はない。
- ダキットが副題に記した「Malay or Indian」という表現は、19世紀当時のケープ社会における東洋風スパイス料理に対する通俗的呼称を反映したものであり、学術的な発祥地や起源を実証するものではない。また「My mother's Recipe」という表記も著者による副題的表現であり、何世代にわたって受け継がれたかを示す客観的証拠ではない。
- 原典の「Meat」は当時一般的であった牛肉や羊肉を指しており、特定の肉種が必須とされていたわけではない。注記の「cold mutton」も冷たい残り物のロースト羊肉など調理済み羊肉の細片を再利用する意図と解釈される。本現代案では品質が安定し家庭で扱いやすい牛ひき肉を選定した。
- 材料表の「アーモンド6〜8粒」について、原典には皮むきや粉砕の加工指示は書かれていない。家庭での再現においては刻みアーモンドやスライスアーモンドが用いられることが多い。
- 現代のボボティーにはレーズンやアプリコットジャム、チャツネを多量に加える甘口レシピが普及しているが、1891年の原典にはこれらは一切記載されておらず、少量の砂糖とレモン汁(または酢)・アーモンドで引き締めた素朴な配合であったことが確認できる。
現代向けの調整
- 現代の家庭で調理しやすいよう、原典の肉2ポンド(約907g)を比例縮小したものではなく、牛ひき肉300gを基準とした約3人分の配合として独自に設計した未試作の提案値である。
- 原典のレモン果汁量(レモン1個分)に対し、本現代案では家庭向け分量(300gの肉)に合わせてレモン果汁10mL(小さじ2)を独自に設定した(比例換算値ではない)。
- 原典の「パイ皿または昔のインド風の小カップ」に対し、現代の一般的な容量約1Lの浅い耐熱陶器皿(グラタン皿等)での焼成を想定した。オーブン焼成温度(180℃)および目安時間(約25〜35分)も現代家庭用に独自設定した。
- 食品安全の公的基準に基づき、ひき肉と卵の混合物の最も厚い中心部が75℃以上・1分間以上に達するまで確実に加熱し、温度計で確認する工程を明記した。
- 香り付けに刺すローリエは硬く消化されないため、誤嚥防止のために供食前または取り分け時に必ず取り除く注意事項を追加した。
参考史料・出典
- Hilda's "Where Is It?" of Recipes (BOBOTEE)出典を開く: https://archive.org/details/b28108486
1891年にロンドンで刊行されたヒルダゴンダ・J・ダキット著『Hilda's "Where Is It?" of Recipes』(Chapman and Hall刊、Wellcome Library所蔵、Internet Archive電子版)の印刷ページ12〜13ページに掲載された「BOBOTEE. (A delicate Indian minced curry. Malay or Indian. My mother's Recipe.)」を参照した。2ポンドの肉、2個の玉ネギ、大きな厚切り白パン1枚、牛乳1カップ、卵2個、カレー粉大さじ2、砂糖デザートスプーン1杯、レモン1個分の果汁または酢大さじ2、アーモンド6〜8粒、バターひとかたまりを用い、パンを牛乳に浸して絞り、バターで炒めた玉ネギにカレー粉・砂糖・塩・酢を合わせ、肉・パン・卵1個と混ぜてバターを塗ったパイ皿または小カップに入れ、もう1個の卵と牛乳を泡立てて上掛けし、レモンまたはローリエの葉を刺してオーブンで焼き、ご飯を添える旨が明記されている。Internet Archiveの原本紙面高精細スキャン画像(Leaf n25およびn26)を直接閲覧・照合した。
- 厚生労働省「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」出典を開く: https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/dl/point.pdf
家庭調理における食中毒予防基準(ひき肉や卵を含む料理の中心温度75℃以上・1分間以上の十分な加熱、生のひき肉や卵を扱った手指・器具の洗浄消毒、生肉と他食材の交差汚染防止、速やかな喫食、室温放置防止と速やかな冷蔵保管)として参照。
- USDA FSIS「Ground Beef and Food Safety」食品安全指針出典を開く: https://www.fsis.usda.gov/food-safety/safe-food-handling-and-preparation/meat/ground-beef-and-food-safety
ひき肉料理の安全基準(食品用温度計による中心温度測定、ひき肉料理の中心温度160°F[約71.1℃]以上への確実な加熱、生ひき肉の味見禁止、調理後2時間以内の冷蔵保管)として参照。
画像の制作・出典情報
© History Meshi (AI-generated recreation image / AIによる再現イメージ)
出典: Modern adaptation concept based on Hildagonda J. Duckitt's Hilda's "Where Is It?" of Recipes (1891, pp. 12–13) / ヒルダゴンダ・J・ダキット『Hilda's "Where Is It?" of Recipes』(1891年)に基づく再現イメージ
利用許諾: Original site asset (not an actual cooking or historical source photograph / 実際の調理・史料写真ではありません)